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歴史の時間 目次 よいこ 株式分割書式
20030212>200603削除>20080316加筆して再掲載    

いきなり結論
この話は、株式分割にまつわるある老人のつぶやきです。                     
今となっては実用的な意味はほとんどありません。    

額面株式の時代
 もうずっと昔のような気がしますが、一昨年まで日本企業の株式には額面というものがありま
した。額面金額というものは神聖不可侵なもので、額面未満の株価で新株を発行することはで
きません。仮に転換価額7万円の転換社債が発行されている会社が1→2の株式分割を行っ
たとしても、転換価額は3万5千円ではなく5万円にしかなりません。そういうルールです。
ちなみに額面金額までは全部資本金に組み入れなければいけませんでした。株価8万円なら
1株につき3万円を資本準備金に入れるわけです。
世の中には
「放漫経営で債務超過のクソ会社にまで、『額面だから5万円で投資しま〜す』ってのは
何かがおかしい。」
と思っていた者もいましたが、法務省には逆らえません。逆らったら株式公開できないし、第一
登記すらできないからです。

分割への根強い抵抗
2001年9月までの旧商法218条により、株式分割では
@額面×株数≦資本金
A1株あたり純資産≧5万円
を守らなければならないという規制がありました。これは無額面株式にも適用されました。
極端な物言いをすれば、
「株は最低価格5万円なのだ」
「株式分割は中身の詰まってない株を増やすケシカラン行為なのだ」
「政府はそういう悪徳商人から国民を保護するのだ」
という一種の愚民政策(&物価統制)です。
 たぶん政・官・財の本音としては
「下々の民は郵便貯金だけやっておればいい」
「一般大衆が株主になったら面倒くさくてしょうがない」
だったのでしょう。昔はそれでもよかったんです。 
ともかく、この規制が急成長したベンチャー企業の株式分割を事実上不可能にしていました。
そのためにヤフー株が品薄なまま高騰し、一時「夢の1億円台」をつけるようなことの原因のひ
とつになりました。

過渡期の手法
 株式分割完全自由化以前の対応策

@1円増資
株式を無額面化し、1円もしくは低廉な価額で株主割当増資をする方法です。1回の株主割当
増資につき株数4倍まで可能で、マネックス証券の64分割(株価1円での株主割当増資)が
業界では有名です。
それにしても株主は1円振り込むために振込手数料数百円払ったんでしょうか。
また、これらの話をしていた時にある会計士が、
「低廉な株価で実質的株式分割をするのは違法ではないが、登記代金や株券印刷費用を
まかなえないような株価で増資するのは健全なやり方ではない」
と至極まっとうなことを言っていました。
なお、未確認情報ですが「全株1円」での増資登記は法務局で認められなかったそうです。
世の中やりすぎはいけません。

A半期で締めて分割
2001年9月までの制限の純資産÷分割後株数≧50,000ですが、この純資産というのは決算期
末の純資産と当時の商法に明記されていました。ところがITバブルの2000年頃には1株数百
万とか、一千数百万で時価発行したため、分割原資はたくさんあるけれど前期末のBSでは法
的には分割できない…でも今どうしても分割してIPOしたい…という会社がいくつも出てきまし
た。
そこで裏技として「どーせ近いうちに分割の制限はなくなるんだから」と、半期決算のBSをもと
に株式を分割してIPOするという過渡期の大技が実行されました。
実際それでグッドウィルグループ(店4723)、ベルパーク(店9441)などが株式を分割して公開し
ました(あと他に1〜2社ありましたが忘れました)。
これらの事例を新聞や雑誌で知った他の企業も
「オリグチちゃんチもやったからボクもやるのー。」
とこの方式での株式分割を続々申請しました。そしてそれに怒った法務省が各地の法務局に
違法な分割の禁止のおふれを出したためにこの方法は終わりました。
やっぱりフライングにも限度があるようです。
20080316追記
5年前にはグッドウィルがこんな状態(営業停止とかコムスン売却とかもろもろ)になるとは全く
想像しませんでした。

おまけ1
 あれ以降、「5万円額面がカッコイイ」という価値感の逆転が起こったというのも、今となって
は懐かしいエピソードです。
昔は
「5万円額面の会社は歴史がないからみっともない」
「5万円額面の会社の株価は割安に放置される」
と、わざわざ50円額面(または500円額面)の休眠会社を買ってきてさかさ合併をして50円額
面の会社にしてから公開するのが店頭公開の作法でした。実際、電力やNTT、JRなど、免許
がらみの会社以外はほとんどがそうやっていました。
 そういう休眠会社を売買しているコンサルタント会社(と称する会社ブローカー)が何社もあっ
たと記憶しています。

おまけ2
 株式を分割するという場合、1株あたりの配当は同額出すのが普通でした。したがって株式
分割は配当負担の増加があるわけですが、「これは業績に対する自信の表れである」という理
由で株価が分割前の株価まで値上がりするという現象が日本ではよくありました。
これを称して分割破壊、失礼、「分割は買い」という格言になっていました。
でもこれが成り立っていたのは、昔は1.2倍程度の小幅分割が多かったからなんですね。
現在の大幅分割なおかつ無配や赤字でも分割する時代においては成り立ちにくくなりました。

おまけ3
 ですから証券出身者は株式分割によるトリックには見事にはまります。たとえば1円増資で16
倍に膨らんだ会社が10万円でファイナンスするとしても、
「株価100円、額面の2倍なら安い」
と言い出しかねません(しかも無意識に50円換算)。
だから目先の利く若手が分割をやりたがるんですよ。

20080316追記
おまけ4
最近資本金の小さな(株数の少ない)オーナー会社で、分割のかわりに予約権で2倍とか3倍に
膨らましてから投資を受ける会社があるみたいだけど、あれって行使するときの税金はどうす
るつもりなんだろう?  参考:会社法Eの2 新株予約権をめぐって
…他人事だから別にいいけど。



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