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●そもそも●
純資産方式とは、会社をその時点で清算したらいくら株主に分配されるか、という想定で 1株あたりの解散価値を計算するものです。
純資産方式には税務上の株価評価方式である時価純資産方式と、その簡便方式である簿価
純資産方式があります。
純資産方式の計算には資産負債表を使用します。
★イメージ図
資産負債表において資産から負債を引いたら資本が残るわけですから、資本の部を株数で
割ればそれで済むはずですが、実際は微妙に違います。
たしかに原則としてはそれでいいのですが、資産負債表には実際には存在しない要素が
載っているので、そういった資産性(又は負債性)のない項目等を排除する必要があります。 国税庁の通達によれば、資産・負債それぞれに「カウントしない項目」が定められています。 従って計算は {(総資産−ノーカウント額)−(総負債−ノーカウント額)}÷株数
★カウントしないBSの科目
資産の部: 前払費用 繰延税金資産 貸倒引当金 繰延資産(新株発行費、研究開発費、開業費)他 会計上資産計上ができるけれども、実態としてその金額が存在しないものはノーカウント です。 負債の部: 役員退職引当金 新株予約権 新株引受権 繰延税金負債 他 会計上負債計上しているけれども、会社をたたむとしたら払う必要や義務がないものは ノーカウントです。 ●実例● 例えば発行済株数500株の会社で上記のノーカウント項目を控除して出した純資産が 100百万円あったとします。1株あたり純資産は200,000円です。 この会社のBSに誤りや不正がなく、資産に含み益がなく、潜在株もなければここで計算は 終わりです。@ ★潜在株調整(希薄化と底上げ) ところが、簿価純資産方式で200,000円のこの会社が行使価額50,000円の新株引受権/ 新株予約権を1,500株分出していたとしたらどうなるでしょう。 1株あたり純資産で投資するつもりで200,000円で100株投資しました。その1ヶ月後、ワラント を持っている人が行使価額50,000円で1,500株行使しました。 そうするとこの会社の1株あたり純資産は (100百万円+200,000×100+50,000×1,500)÷(500+100+1,500)=92,857 A になってしまいます。これが希薄化といわれる現象です。 そこで潜在株調整として、行使される前から、潜在株が全部行使された後の1株あたり純資産 と考え (計算で出した純資産価額×発行済株数+潜在株の行使価額×潜在株数) ÷(発行済株数+潜在株数) という計算をします。これが潜在株調整です。 B 備考 この潜在株調整は国税庁の財産評価基本通達に明記された方法ですが、実際にこの状態で 相続が行われた場合、調整後の株価を税務署が時価と認めないことが多いそうです。認める と税額が低くなるからです。 国税庁の出す通達は、現状では課税において法律とほぼ同じ強制力を持っています。 しかも、出した通達が課税に不利な場合は、その通達を適用しないこともできます。 日本国民はやられっぱなしです。 さて、逆に、発行済株数500株の会社で上記の項目を控除して出した純資産が1百万円しかな い会社だとします。1株あたり純資産は2,000円です。 とりあえずいくらで投資するかは置いといて、 この会社の純資産はいくらになるか考えてみましょう。計算すると (1,000,000+50,000×1,500)÷(500+1,500)=38,000 です。では38,000円が時価かというと、どうでしょうね?? これはいわゆる株価が「シークレットブーツ」をはいている、もしくは「超厚塗りメイク」の状態 です。現時点においては2,000円が時価と考えた方がいいでしょうね。B 注 @本稿は、株価評価方式の解説です。 対象となる会社の資産負債表に間違いや粉飾がないという設定で書かれています。 投資を検討する時には、多少お金がかかっても、その会社と利害関係のない監査法人に ショートレビューをやってもらうのがいいでしょう。 A字で書くと複雑ですが、これは株数による加重平均です。 仮に株数と潜在株数が同じなら調整後の株価は (計算で出した純資産価額+潜在株の行使価額)÷2になります。 Bもちろん、計算された株価は将来の成長を織り込まない静的な価値評価です。第三者で あるVCがこの後の事業計画に賭けて資金を投入する場合には、この価格で投資する 義務はありません。問題は、状況が見えた上で判断が行われているか、ということです。 御社には、登記簿謄本を見る前に投資を決めてしまう「自称ベンチャーキャピタリスト」は いませんか? ●時価純資産方式● 時価純資産方式は税務上認められた正しい方式であり、遺産相続やオーナー親族間の株 式譲渡でもおそらく無条件で使用できます。ただ、VC投資においてはこの方式はあまり行われ ていません。その理由は、 @BSの全項目の時価評価と、無形資産の評価が必要で、作業が大変、というか無理 Aそもそも不動産や株式に大きな含み益や含み損がある古い会社に投資することは最近 ではそれほど多くない からです。 この手の相続・贈与がらみの案件は大手証券会社や都銀・信託が強いです。事業承継の ノウハウ本などを各支店に配備し、資産家のハートを射止めようとがんばっています。万が一 作業中に殺人事件が起こったとしても、そこへ会計士と税理士と弁護士と金田一耕介が登場 して見事解決し、 「 ま た 野 村 か ! 」 ということになります(うそ)。 それはともかく、5年に1回くらい含み資産があるような古い企業の案件が湧いてくることもあ るでしょうから、計算のしくみを書いておきます。式は {(総資産時価−ノーカウント額)−(総負債−ノーカウント額)−税金相当額}÷株数
です。
税金相当額とは(資産の時価−資産の簿価)×42%(現時点の法人税)です。 時価純資産方式というのは、算定した時点ですべての資産を時価で売却し、そのお金で負債 を全部清算して残りを分配したら1株いくらになるかという評価方式です。だから簿価より高くな っている資産がある場合には時価と簿価の差額に課税されます。さらに、時価純資産方式で はBS上の資産だけでなく、借地権・営業権など売れるものならなんでも全部評価して合計しま す。 だから本気でやると相当面倒です。 ですからVCの投資対象であるような会社の場合は、一部のリッチな例外を除き、簿価純資産 で算定すればだいたい間に合います。 なお、調整については簿価純資産と同じなので省きます。
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